第68話

蛍に、というより、蛍の服に顔を埋める感覚だった。そのまま蛍の背中に腕を回す。男の人の背中は意外にも広く、体は硬く、そのままぎゅっと抱き締めれば、私の背中にも蛍の腕が回されるのが分かった。



私と同じように抱きしめてくれる男⋯。



「湖都⋯」


「なに?」


「⋯」


「え?」



何かを喋ったようだけど、上手く聞き取れず。



「蛍?」



私は蛍の胸元から、顔を上に上げた。


至近距離の蛍は、背中から、後頭部へと手を移動させ、私の頭を優しく撫でていて。



「⋯キスは?⋯イヤか?」




き、すって⋯。


キスだよね?



唇を、合わせるんだよね?



そのキスだよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る