第62話

怖いのに。

怖いのに。


男の人が怖いのに。



グラスから、手を離した私は


ゆっくりと、本当にゆっくり、


差し出す蛍の指先に、ふれた。



その瞬間、ふわっと、私の目から涙が零れだし。


ふれてる。


自分以外の、肌のぬくもり。



1センチほど重なった指先を絡ませるように動き出した蛍の指先。

全く震えることのない私の体。



蛍を、受け入れることが出来たということ。




「大事にする」



蛍は真剣な声を出しながら、私の手を握りしめた。

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