第55話

人が一人分入るスペースで隣を歩く蛍の髪色は、やっぱり明るく。



20分ほど歩き、駅の方の飲食店が並ぶ場所へやってきた私達。「本当にパスタでいいのか?」と聞いてくる蛍に、私は「うん」と言う。




何度かこの店には、来たことがあった。



料理を注文し終え、運ばれてきた水の入ったグラスを手に取ろうとした時、突然、目の前に座る蛍は少しだけ笑った。



何故笑うか分からず、「どうしたの?」と聞けば、「いや、思い出し笑い」と言ってきて。




全く、怖いとは感じられない蛍は、「湖都から水かけられたの、思い出した」と、私を見つめながら笑ってきて。



「あ⋯」


「不思議だよなあ、アレから、こんな関係になるとか」


「⋯」


「今日は零さねぇの?」



からかうように笑った蛍に、顔が赤くなるのが分かった。

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