第38話

けれども、その考えは間違っていたようで。



ゴールデンウィークが明けた頃、教室内の自分の席から立ち上がろうとした時、ドン―――と、私は何かにぶつかった。



「あ、わりぃ!」



そのぶつかった相手が、男だと分かった時、足がガクガクと震え出すのが分かった。あの事件直後からはマシになったとはいえ、やっぱりまだ、‘男’という存在が怖いらしい私の体。




脳裏に浮かび上がる気持ち悪い記憶を消そうと必死な私は、どうすれば記憶喪失になる事が出来るのだろうと、本気で考えるほどだった。







「よぉ」


今日も、2時間遅れの休憩らしいコンビニ帰りの蛍が、校門前でお母さんを待っている私に話しかけてくる。



「こんにちは」


そう言った自分に驚いた。

何故、蛍ならこうして会話が出来るのか⋯。



震えることもなく。

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