第23話

「あなたの、名前は?」


「俺? 俺はほたる。虫だし女っぽい名前だから覚えやすいだろ?」



蛍⋯。

確かに虫だけど。

女っぽいけど。

珍しい名前だから、覚えやすいだけど。



「な? その通りって思ったろ?」



冗談か冗談じゃない笑い方をして、私を笑わそうとしているのか。

目を細め、私に向かって笑いかけてくる男。



それに釣られて、まんまと思っていた事を言い当てられた私は、ふふふ⋯と、小さく笑った。


それを見た男は、ピタッと、笑うのをやめて。



いきなり顔を傾けてきて、マジマジと、私の顔を見てきて。



「つーか、俺、あんたのこと見たことあるような気がする」


「え?」


「もしかして、三ノ輪みのわ高校?」



三ノ輪⋯。



「だよな?つーか、昨日⋯三ノ輪の制服⋯だっけ?着てたよな?」



確かにその通りだった。


三ノ輪高校、私の通っている高校の名前で。

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