第21話

「風邪気味だったのに、オールでカラオケ行っって、喉潰れただけ」


また、ゴホゴホと咳をし。



「あんたのせいじゃないよ」


息を整えた後、マスク越しで、私に微笑んでくれて。その笑みにホッとした私は、「で、も⋯、ごめんなさい⋯」と、小さな声で呟いた。




「あんたは⋯ってか、名前なに?」


「え?」


「名前」



名前?

いきなり、名前⋯?


初対面の人に、名前を教えるって、どうなの?



「呼び方、‘あんた’でもいいなら、それでもいいけど」



枯れた声で、綺麗な二重を向けてくる男。

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