第17話

「落としすぎじゃねぇか?」



男の声。

低く、枯れた声。


その声は、昨日の同じ声で。





「昨日は、零す、だったけど」


少し笑いが含まれているその声の主が、拾い上げた私のスマホを、目の前に差し出してきて。



私は無意識に、顔を上へと上げていた。



私のスマホから、お腹、胸板、首。

そして顔へと―――⋯。




「ゴホゴホっ⋯」と、口元を手でおさえ、咳をする彼の口には、マスクがあり。



マスクで隠れている場所以外に見えるのは、

キリッとした、二重の目。

少しだけ、細い眉。


透き通っているような、明るい茶髪。




咳をやめたその人は、「どうぞ」と、私にスマホを再び差し出してきて。



それに対して、恐る恐る受け取ることが出来たのは、カウンセリングを受けたばかりで心が落ち着いていたからか。

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