第76話

息がっ。


息が出来なっ。




「マツリッ!!」



「……っ」



「待ってろ!!今っ」




“なんで?”



う……ん?




声が聞こえる。




悲痛に満ちた声だった。



リンではない。



リンは剣を



チョッ待てっ、その剣をどうするつもり



いいいいいいいいいっ!?




ビュッ!!



「ガポゴポポポッ(バカかぁぁぁっ)」



「やっぱりダメか」





奴は迷いなく、剣で水球を一閃した。


危うく腹も一閃されそうになったあたしはなんとか腹を引っ込めて回避したけれど……



叫んだせいで大量の水の飲み込み……



みるみる内にあたしの体力ゲージが減っていき……




死ぬな。



覚悟した。



リンめ、一生恨んでやる。



そんなことを思いながら。




“なんで?帰ってこない、帰ってこない。待ってる、ずっと待ってるの”




頭の中に響く声。



待ってる?


誰を待ってるの?



アナタは誰ーー




「マツリッ!!」




リンの焦った声を聞きながら、ほぼお前のせいだぞ!?なんて思いながらあたしは意識を失った。





























「……っ……っ」



「うる……さい。まだ寝」



「起きろっ、この寝坊助がぁぁっ」




バチーーンッ!!




「あ痛っ!?何っ!?何っ!?」




頬に強烈な痛みを感じ、跳ね起きる。




「起きたか?」




起きて最初に見たのはアイスを口に咥え、PSPから片時も視線を外さない幼なじみの姿だった。



現実世界に戻ってきたらしい。




「……そうか、あたし死ぬとこだった」



「そうだ、このイオリ様に感謝しろ」



「イオリ様!!」



「ずっと画面見てなくて、放っておいたらなんかピコンピコン言い出して焦ったわ」




アッハッハッと笑うイオリ。




「見とけよっ」




感謝して損したわっ。

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