第71話

「う……あ…っ」



「……っっ!!」




村人1、2が突然現れた召喚獣のフィルさんにビックリしてる。



あたしはリリ嬢に回復魔法を掛けてもらいながら周りを見る。




まだ深々と降り続く雨。



静かで湖にでも沈んだかのような村。



人々の生気を全く感じない、旅人が通っても廃村と間違われてしまいそうな村。



この村に一体何があったというのか。




「ありがとう、リリ嬢」




目の前がクリアになったところで、リリ嬢にお礼を言う。



さてさて。


今度はリンを見る。


よくよく考えたら、あたしは“主役”ではない。


多分何か“やらなければならない事”があって、喚ばれたのはわかる。



けれどこれは、リン達の物語だ。



あたしがしゃしゃり出ていい物じゃない。




「いや、散々僕達を掻き回してますが!?」



「黙らっしゃい。ゾイド」




人の心の中を読むのではありません。




「なんだよ?」




なんだよ?じゃねぇわ。


しっかりしろよ、王子。




「おもわず、フィルさんを喚んじゃったがどうする?」




決定権はアンタにある。




「お前、散々吹き飛ばせだなんだと命令しといて」



「忘れなさい、そんな昔のこと」



「たった今だが?」



「黙らっしゃい、ガラ」




この優しいゴリラ。


突っ込んでくるな。




「ア…アンタ達、何者だよ…」




村人1が聞いてくるが、それには誰も答えず




「フィルオーレ」



“なんだ?”




リンの呼びかけにフィルさんが答えるが




「”……”」



「マツリ」



「うぬ?」




何かね?リリ嬢。




「「……」」




見つめ合うあたしとリリ嬢。



こんな美人と……照れり。




「照れてないで、通訳して」




そうでした!!


何故か、あたしだけ召喚獣の言葉がわかるんだった!!



















フフッ。


コイツら、あたしが居ないとダメ




「前髪もう一度、燃やすよ…?」



「すみません!!」




あまりにも冷たいリリ嬢の視線に、あたしは全身全力で謝った。


ヴヴヴ…。


前髪大事。

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