第55話

「「…………」」



「もうっ!なんなんですか!あなた達はっ!しっかりして下さいっ!」




森の中を歩くこと一時間ほど。



しっっっっっっっっかり寝たゾイドは完全復活を果たし、あたしと王子を睨んでくる。



そんなあたしと王子は瀕死レベルだった。



戦闘があったわけではない。



ただの寝不足……である。




あの後、王子とあたしとイフィートはお菓子パーティーで盛り上がりコーヒーをガバガバ飲んだ結果……。



一睡も出来ずに今に至る。




寝不足で歩くってのはこんなに辛かったのか……。



レベル2になったからと調子に乗ったのがいけなかったのか……。




因みにイフィートはまだ帰ることなくガラの頭で爆睡中だ。



羨ましいっっ。




「全くこれでは次の村まで今日中に辿り着けるか……」





ハァァァッとデッカイ溜め息をつくゾイド。



すみましぇん……。



こればかりは何も言えない。




てか……ん??




「村??」




村ですとな!?




「ええ。森を出たすぐの所に小さいですが村があります」




眼鏡を押し上げてゾイドが言う。




……村。




「温かいご飯」




ぬ!?リリ嬢!?




「お風呂なんかもあるかもな」




ぬぬ!?


イフィートを頭に乗っけたままガラまでも言う。



器用だね、ガラ。




「そして何より柔らかなベッド」



「ハイハイハーーーーイ!!」




あたし復活!!



リリ嬢、ガラ、ゾイドが言ったことはもちろん魅力的だが、それよりもこの世界に来て初めての村っ。




ワクワクがっドキドキがっ止まらなしっ!!




「うっ裏切り者……」




顔色を真っ白にした王子が恨めしげに睨んでくるが




「踏ん張れ王子っ!気張れや王子っ!」



「俺は夜型……」



「今は夜だぞっ」



「メチャクチャ明るいんだが……」



「気のせいだっ」




あれだ、あれ。



心頭滅却すれば朝もまた夜なり。




「違います」



「ぐぬぅ……」




ゾイドが途方もなく冷たい目で見てくるではないかっ。

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