第54話

……って、何か忘れてるような??



そうだ、そうだ。



名前を聞かれてたんだっけ。




「イフィートだって」



「イフィートか。俺はまだ炎の召喚獣とは契約してねぇわ」



「そなの?」



「ああ、炎系はなかなか気難しいんでな。契約出来ないことが多い」



「へー」




と言ってもあたしも契約なんてしてないしな。





「……んじゃイフィートは??」



『なーに??』



「なんでここに来たの?」




契約者もいない。


喚んでもいない。


なのに。




『楽しそうな気配がしたっっ』




明るい声で言うイフィート。



どう見てもこの子は子供で。



気難しいとは、何かちょっと違うような……。




子供だからかな……??



しかし





「楽しそうな気配??」




なんのこっちゃ。




「なんだって??」



「楽しそうな気配がしたんだって」



「楽しそう??」




二人で首を傾げる。




「で?いつ帰るの?イフィート」



『まだ居る!!』



「え?なんで?」



『お菓子まだあるしっ、まだ居る!!』




お菓子かいっ!!



楽しそうな気配って、まさかお菓子のことなんじゃ……。




「なんて??」




通訳っ。


通訳ちょっと面倒くさっっ。




「まだ居るって」



「フーン。いんじゃね」




良いんかいっ!!




「戦闘楽ちん」




ニヤッと王子が笑う。



コイツ……




「ナイス王子」



「だろ?」




あたし達は悪党のように笑う。



そして乾杯などしつつ、逃げられてなるものかと、イフィートのご機嫌を取りながら夜は更けていった……。

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