第90話

田舎特有の一本道になり、藤井さんのレンタカーは付いてこれなくなった。


頼みの綱はありえないところに乗っている琉偉だけだ。



「クソっ……! 振り落としてやる……!!」



ストーカーが忌々しげにそう言って速度を上げた。さらに、琉偉を振り落とせるようわざと荒い運転をする。



車の上は元々人を乗せるための設計をしていない。さすがに左右に振られると耐えられなかったのか、


――――……車の後ろの窓から、琉偉が上から道路へと落ちていくのが見えた。



そんな…………。


走っている車の上から落ちるなんてただでは済まないだろう。打ちどころが悪ければ死んでいるかもしれない。





「車止めて!!」



私が急に大声を出したことでストーカーは驚いたのか、ビクッと体を揺らしてこちらを振り向く。


おかげで車の走行速度が遅くなったが、止まろうとはしていない様子だ。



「あんたそこまでして何がしたいの!? 今ならまだ罪も軽くなるかもしれないのに!」


「あ、あいつが悪いんだ! 上に乗ってくるから!」


「あんたが悪いことしなけりゃ乗ってこなかった! さっさと車止めて戻って! 死んでるかもしれないでしょ! 今すぐ救急車呼ばないと!」



ストーカーが動揺しているのが分かる。さすがに人を殺すつもりまではなかったのだろう。



「琉偉を殺したらあんたのことも社会的に殺すから!」



そう叫んだ時、



『雪、聞こえる!?』



玲美の方のミュートが解除された。



「玲美……っ聞こえてる! ねぇ、今すぐ救急車を――」


『信じられないかもしれないこと言っていい!?』


「こんな時に何!」


『あいつ……走って車と並走してるわ!』




!?

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