第88話
『雪、今どこ!? 藤井さんや城山琉偉にも連絡して、今合流してるんだけど……!』
かなり動揺している様子の玲美の声が聞こえてくる。
目が覚めて私だけがいなかったらそりゃあ焦るだろう。
ストーカーが車に戻ってくるかもしれないので、手短に伝えた。
「✕✕サービスエリアってところ。今、手足縛られてあいつの車の中。おじいちゃんの別荘に私を連れて行くって言ってた」
『ハァ!? ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!』
『その位置から隣県に出るならICは一つしかない。それに、幸いにもちょっと渋滞してる。新幹線で行けば先回りできるかもしれない』
少し遠くから琉偉の声も聞こえた。
琉偉の言葉を聞くとこんな状況であるにも関わらず何故か心底ほっとしてしまう。
『今特急券購入しました』と言う藤井さんの声も聞こえた。
『ゆきちゃん、車のナンバーは分かる?』
「中にいるから分かんない……。でも、前に黄色の交通安全のお守り吊るしてある」
車に交通安全のお守りを置いている人なんて五万といるだろうからかなり役に立たない情報だろうが、無いよりはマシだろうと思って伝えた。
すると、電話の向こうから空斗の声がした。
『いや、ナンバー分かるぞ! あいつの友達がインスタにあいつの車でドライブ行った時の写真あげてる! えーっと、ちょっと解像度低いけど……』
『ちょっと見せて。……これくらいなら解像度上げれるよ。俺のスマホに転送してくれる?』
浅い関係の後輩の友達のインスタの投稿内容を覚えている空斗も凄いが、冷静に色んなスキルを披露してくる琉偉も凄い。
『雪、今あいつはいないのよね?』
「トイレ行ってるだけだから、すぐ戻ってくると思う」
『分かったわ。バレないように私たちはミュートにするけど、このまま電話繋げておいてくれる? 何かされた時の証拠になるように音声残したいの。録音しておくから』
「分かった……。皆、ありがとう」
なんと頼もしい仲間たちなんだろうか。
この布陣を敵に回したストーカーが可哀想に思えてくる。
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