第80話

琉偉が珍しくチッと舌打ちするのが聞こえる。


空斗は琉偉の隣にいる私など目に入っていないかのように私をぺいっと退かして琉偉に詰め寄る。



「俺、ずっと前からファンなんです。ツーショ撮ってくれませんか?」



白い歯を見せてキラキラ爽やかスマイルを浮かべる空斗は明らかに外向きの態度だ。


ずっと前からファンって言えるほど琉偉のこと知らないでしょーが!


こいつ結構芸能人好きだっけ……デレデレしやがって……。



「ああ、そうなんだ。ありがとう」



琉偉は琉偉でめっちゃ塩対応だし。棒読みすぎるだろ。


琉偉にとっては流出したあの盗撮写真が余程ダメージだったらしい。空斗への敵意丸出しである。



「雪邪魔してごめ~ん。城山琉偉が来てるって言ったら空斗すぐ走っていっちゃって」



今度はクリームシチューが乗ったお盆を持った玲美と藤井さんが入ってきた。


クリームシチューが順番にテーブルに並べられていく。



「そうそう空斗、ゲームはこの前保存した状態のままにしてあるわよ」


「ゲームなんてしてられませんよ。城山琉偉くんが来てるっていうのに」


「うわっ……猫被ってる」



玲美が空斗にゼルダの伝説の状態について説明するが、空斗は爽やかスマイルで答えている。


空斗に出会った頃ってこんな感じだったっけ。ていうか空斗って私たち以外の友達の前じゃこんな感じだよね。



「では、琉偉と雪さんが付き合った記念日を祝して早速食べましょう!」



何故か藤井さんが仕切り、晩ごはんタイムが始まった。


空斗がえ、マジ?付き合ったん?という顔で見てくるので目をそらした。


空斗がファンとの恋愛は気を付けろという忠告をしてくれたにも関わらず結局付き合ってしまったのが気まずかった。




 :



クリームシチューを食べ終わった後、だらだらと五人で冷えた麦茶を飲んでいると、ふと琉偉が言った。



「あの写真を載せた人、特定できたよ」


「「「「え!?」」」」



私含む琉偉以外の他四人の声が重なる。


琉偉がさっきからずっと無言でパソコンいじってたのってそのため!?



空斗のアドバイス通りに動いたことであの投稿はすぐに消去されたのに、どうやって……。


でもそういえば琉偉って私のアンチは全員居場所特定してるって言ってたしな。これくらい朝飯前なのかもしれない。


大丈夫なのだろうか。法に触れないだろうか。

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