第78話




「いつの間に成就してんのよあんたら!?」



玄関口で、琉偉と私が手を繋いでるのを見た玲美が叫ぶ。



「いや、なんか藤井さんと電話してたら琉偉に私の気持ちがバレて急に家まで迎えに来られたから窓から飛び降りて拉致されて眺めのいいレストランで話し合って……」


「そんな面白そうなイベントに何で私を呼ばないの!?」



この急展開の中にどう玲美を混ぜろというのか。



「では、僕はこれで」



私と琉偉を送り届けてくれた藤井さんが帰ろうとするのを、騒いでいた玲美が止める。



「折角だから藤井さんもどうですか? お母さん、今日クリームシチューをデカい鍋で16皿分作っちゃったみたいで大変なんですけど」


「市販のルー二箱分じゃないですか。何故……」


「お母さん天然なんで……」



玲美が苦笑いしながらそう伝えると、藤井さんは琉偉と私を見つめた後、「ではお言葉に甘えて」と微笑んで靴を脱いだ。藤井さんとしても、恋が成就した後の琉偉の様子をもう少し見ていたいのだろう。


三人で玲美に続いて玲美の部屋に続く階段を登っていた時、不意に玲美がこちらを振り向いた。



「そういえば、今日空斗も来るわよ」


「空斗と2人で約束? 珍しいね」


「後で雪も誘おうと思ってたからちょうどよかったのよ。ゼルダの伝説の続きやりたいんだって。自分で買えって感じよね」



呆れたように笑う玲美。


そういえばこの間、空斗と三人で玲美が買ったSwitchのゲームをやったのだった。空斗がハマりすぎて全然私たちにコントローラーを貸してくれなかったのを覚えている。



「空斗にも直接お礼言わなきゃって思ってたところだからちょうどいいかも」



空斗にはSNSでの投稿消去依頼の出し方について色々と教えてもらったので、改めて感謝を伝えたいと思っていた。


身近にネット上での活動者の友達がいるのは有り難い。





「ゆきちゃん、空斗って誰?」





背後からひんやりした空気を感じて、階段を登りきる前にゾクッと悪寒が走った。

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