第77話
「……え?」
「俺が犯人を見つけ出すよ。開示請求依頼してるうちにまたゆきちゃんに何か起こったら耐えられない。こんな奴が野放しにされてる期間は短い方がいい」
こんな怒気を孕んだ目をした琉偉初めて見た、と思った。
酷く怒っているようだ。確かに、炎上の原因はこの写真であり、この投稿に便乗して私は沢山酷いことを言われた。琉偉がそれに目を通していないはずがない。
重度のオタクと悪質なアンチ、仁義なき戦いの始まり――なのかもしれない。
「ゆきちゃん、辛かったでしょ」
「別にアンチとか慣れてるし、大したことじゃない」
「でも、友達を巻き込まれるのは初めてだったでしょ」
「……」
「ずっと観てたから知ってるよ。去年の3月1日の配信で、【こんな活動してるなんて親が知ったらどう思うだろうね。お前の母親もアバズレなんだろうね】なんていうクソみたいなコメントが来た時、ゆきちゃん、自分のお母さんのいいところプレゼンした後コメント送ってきた奴にボロカス言って謝らせてたもんね。自分のことは何言われてもいいけど、大切な人を侮辱されるのは大嫌いでしょ、ゆきちゃんは」
「配信の日付と来たコメント一言一句覚えてるの怖いけども、確かにそうかもね」
「だって俺そのコメント許せなくて何回も配信サイトの運営に通報したもん」
「怖……」
過激な信者のような対応にちょっと引いてしまったが、予想以上に琉偉が私のことを理解していて少し驚いた。
琉偉の前で強がっても何だってお見通しな気がして、諦めて正直な気持ちを吐露する。
「……そうだね。本当は結構怖かった。今回のことは。玲美に何かあったらどうしようってすごく不安になった」
「俺、これからはゆきちゃんのそばにいてもいい? ゆきちゃんが怖い時、怯えてる時、そばにいられないのが何よりも歯痒かった。もう会わないって言われた後だったから」
「……うん。そばにいてほしい」
言葉にすると何だか涙が出てきた。気が緩んだのかもしれない。こうお願いしたら、琉偉は絶対にそばにいてくれるだろうと思うから。
いつだって私に絶対的な安心感を与えてくれるのは琉偉なのだ。
めそめそと泣く私を抱きしめ、琉偉が頭を撫でてくれる。
運転席にいる藤井さんが、「僕邪魔すぎてここにいるの気まずいな……」とぼそりと呟いたのが聞こえた。
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