第70話

「…………虫酸が走りますね」



想像するだけで嫌だった。


元来私は琉偉が仕事のうえで他の女とキスしていただけでペットボトルを潰すくらい嫉妬深いのだ。そんなこと許せるはずがない。



「じゃあもう、それが答えでいいじゃないですか」



ははっと藤井さんがおかしそうに笑って飲み干したコーヒーの缶をドリンクホルダーに戻す。



「撮影後は二人きりになれる時間作るんで、ゆっくり話してくださいよ。僕はそろそろ現場に戻りますね」



私を説得するためだけに戻ってきたらしい藤井さんはそう言って車から出ようとして、ふと思い出したかのように私を振り返って忠告めいたことを残していった。



「散々背中押しておいてこういうこと今更言うのもあれですけど、一応注意しておくと、琉偉、両思いになったら愛が爆発して多分しつこいと思いますよ? そのへん大丈夫です?」


「……予想できてるんで大丈夫です」







FILE5

嫉妬心


天才俳優と恋人になる覚悟は決めた。

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