第58話
結局夕食を三人で一緒に食べた後、私と空斗は玲美の家を出た。
帰りに使う駅が同じなので、そこまで一緒に並んで歩く。
「お前さぁ、さっきの話だけど」
「さっきの話? どれ?」
「城山琉偉を好きになっちまったって話」
その話は晩ごはんを挟んで私たち三人の間で言及されなくなっていたので、まさかもう一度掘り返されるとは思わなかった。
「俺正直ファンの子食ったことあんだよな」
突然の暴露に口をあんぐり開ける。
「空斗のリスナーって割と年齢低めな子多くなかったっけ……相手未成年じゃないよね? やめてよ?」
「ちっげーよ。さすがに成人してる子だわ。その子ちょっと不安定になりやすい子だったから、一応スマホチェックしてたんだけどさ。寝てる時の写真撮られてて、あぶなってなったんだよな。Twitterでも匂わせみたいなこと散々やられたし。そういうのもあってファンとの恋愛は反対してるっつーか……さっきはデリカシーないこと言っちまって悪かったな」
空斗は意外にも私のことを心配して止めてくれていたらしかった。しかも、そんなこと特に気にしていなかったのに、わざわざ謝られるとは。
「あんた、意外といい奴?」
「うるせーよ。俺は元からいい奴だろ」
こちらを見ずにぶっきら棒にそう言う空斗に、ぷっと吹き出してしまう。
「何笑ってんだ」と睨んでくるものだから更にゲラゲラ笑う私を、「品がねーな!」と罵ってくる空斗。
ふと、空斗の頬にまつ毛が付いているのが見えて、
「あ、ねぇ、ちょっと動かないで」
と言って近付き、指でそのまつ毛を取ってあげた。
「さんきゅ」と空斗からのお礼を頂いた後、私の方が電車の時間が早いので急いで別れを告げ、走って改札を抜けた。
「ゆきさん……許さない――……」
――――まさか、その様子を後ろから写真に撮られているなどとは知らずに。
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