第56話
ドラマの内容は、普通の恋愛もの。最近流行っている女性向け漫画を原作に少し手を加えたラブストーリーだ。
鈍くさい新入社員の主人公が憧れの上司に片思いしつつ仕事も頑張り問題を解決していく内容。
頑張っている主人公を応援したくなるな、と純粋にストーリー自体を楽しんでいたが、エンディングが流れ第一話も終盤に差し掛かった頃、私は動揺することになる。
主人公がタクシーから降りるシーン。会社の前に上司役の琉偉が立っている。そして、琉偉の前には美人な会社の先輩が立っており――赤いリップを付けたその先輩役の女優は琉偉の首に手を回し、琉偉にキスをした。
主人公の絶望した表情がスローモーションで映る中、私もべしゃりと手にあったペットボトルを握り潰してしまった。
「うおっ、」
私がペットボトルを握り潰したせいで中のジュースがズボンにかかったらしい隣の空斗が悲鳴を上げる。
「あ、ごめん」
慌ててティッシュを取って空斗のズボンを拭くが、続きが気になって仕方無く、目線はガッツリテレビの方に向けてしまった。
琉偉と女上司のシーンはあっさり終わり、エンディング曲が流れ続ける。
「……なんか今日の雪、変じゃない?」
玲美が訝しげに私を見てきた。――まずい。勘の鋭い玲美に疑われては終わりだ。玲美に隠し事なんて出来っこない。
「そ、そう?」
「城山琉偉の話したり、城山琉偉のシーンが流れた時だけ挙動がおかしいわ」
目を泳がせる私にずいっと顔を近付けてくる玲美。
「城山琉偉となんかあったでしょ」
――ああ、だめだこれ、誤魔化せない。
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