第48話
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私、天才では……?
友達が玲美くらいしかいないので誰かの誕生日を祝うために部屋を飾り付けるなんて陽キャのようなことをするのは人生初だったが、見様見真似で飾り付けると意外とうまくいった。誕生日用の風船や花でいい感じになったベッド周りを見て、ふぅ~と息を吐く。
あとは時間が近付いたらケーキを冷蔵庫から出して、テーブルにキャンドル置けば完成だ。
思いの外早く終わったので、なんとなく興味を持った琉偉と藤井さんの関係性についてネットで調べると、藤井さんの名前は伏せられていたが、琉偉の現マネージャーが元々実家が隣の幼馴染みであることが書かれていた。
確かに今日の藤井さん、琉偉に対して敬語とはいえ馴れ馴れしい感じだった。部屋も同室を取るくらいだし、そこそこ仲が良いのだろう。
ふと検索履歴が琉偉関連のワードばかりになっていることに気付き、慌てて全て消去する。
何やってんだ私、これじゃまるで琉偉のファンみたいじゃないか。
何だか癪なのでそれ以上スマホは見ず、ホテルのテレビを付けて暇を潰した。
それから数時間後、予定通り23時50分頃に、【そろそろホテルにインします】という藤井さんからのメッセージが送られてきた。
深夜ドラマに見入っていた私は慌ててケーキを取り出し、部屋の明かりを消す。
私自身も身を隠し、スマホをいじりながら琉偉たちが入ってくるのを待った。
しばらくしてドアが開く音がして、その後で琉偉と藤井さんの声がした。
明かりが付いた後、「え、なにこれ」と琉偉の驚く声がする。
「藤井が用意したの? 毎年凝ってるなぁ」
「いえ。今年は僕が用意したわけじゃありません」
藤井さんが否定したところで、窓際のスペースからひょっこりと顔を出してみる。
琉偉が私を見て驚きすぎて声も出ないといった顔をした。その間抜けヅラが可笑しくて思わずぷっと吹き出してしまう。
「幻覚……?」
自分の頬をつねり出すから更に笑ってしまった。
「幻覚ですら可愛い、ヤバい、俺のゆきちゃん可愛い……」
お前のじゃねーけどな。
私を凝視し、ようやく私が幻覚でないことを確認できたらしい琉偉は、ぐるっと首を回して藤井さんに噛みついた。
「藤井お前、ゆきちゃん帰ったって言ったじゃん!」
「そりゃあ貴方の誕生日なんですから騙しもしますよ」
「俺がゆきちゃんに対して必死すぎて引いて帰ったって言ったじゃん!」
「貴方の落ち込み様、面白かったですよ」
悪びれもなく返答する藤井さんはちょっと楽しそうだ。
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