第31話

男を凝視しながらその名で呼びかける。


男も玲美も固まった。



「……え? どうしたの雪」


「この人、yamatoと同じ声してる」



私の言葉と共に、玲美が男の方を向く。


男は数秒硬直していたが、すぐににこりと笑顔を作った。



「はは、何言ってるんですか。僕の名前はヤマトじゃないですよ?」


「そのははって笑い方もyamato……嘘でしょ……?」



私も信じられなくて、思わずそんな言葉が出た。


でも間違いない。このトーン、この話し方。演技中とは違う、フリートークをしている時のyamatoの声。



男がクルッと踵を返して走り出した。まるで逃亡するかのように、全速力で。


過去に運動部に入っていないとあのスピードは出ないだろうってくらいの速さで、男は3階から消えてしまった。




「…………」


「雪が変なこと言うから怖がらせちゃったじゃない」



あれがyamatoだとは全く信じていない様子の玲美。


玲美はyamatoの配信を聴いていないから分からないのだ。




帰ったら玲美に嫌というほどyamatoの配信を聞かせよう、そう思った。

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