第24話




「城山琉偉のマネージャーの藤井です。どうか琉偉に会いに来てくれませんか」



結局夕方まで玲美の家でダラダラしていたところへインターホンが鳴ったかと思うと、見知らぬスーツの男性が私を呼んでこう言った。


ジャンプ漫画の最新刊を読んでいたところだった私は邪魔されてイライラしていたが、マネージャーの表情が真剣すぎて何も言えなくなってしまった。



「琉偉の炎上の件はご存知ですか」



私が状況を読み込めていないことを察したのか、マネージャーとやらは続けて質問をしてくる。



「はぁ……。炎上しかけてるって話は聞きましたけど」


「現在燃え盛っています。心無いメッセージが幾度となく届き、事務所には番組のレギュラーを降りろという脅迫状も」



そこまで……?


っていうかあいつ、最初はゲストだったのにレギュラーになってんのか。



「有名人なんだからそんなの慣れっこなんじゃないんですか?」


「まさか。琉偉は凄く打たれ弱いですよ」


「打たれ弱い……」


「活動当初は一件の中傷コメントで体調を崩していたレベルです」


「一件で……?」



ネット上でしか活動していない私ですら、中傷コメントは頻繁に来る。そんなの気にしてたらキリがないからいつしか無視するスキルが身についたけど……琉偉はそうじゃないの?大人気俳優で、私よりずっと多くの人に見られてるのに?



「変えたのは貴女ですよ、“ゆき”さん」



マネージャーが私の目を真っ直ぐと見て言った。



「……え?」


「琉偉はネット上で貴女を見つけてから、貴女を心の支えにしてきました。最初は気まぐれだったんです。FamMomで、自分と同じように活動を開始したばかりの活動者を漁って見ていただけ。その中にたまたま貴女が居ました」


「……」


「琉偉はいつしか“ゆきちゃんも頑張ってるから一緒に頑張る”と言ってメンタルを回復させるようになりました。今の琉偉のメンタルを救えるのは貴女しかいません。何故なら貴女こそこれまでの琉偉を支えてきた女性だからです」



いや、私何もしてないんだけど…………。


琉偉が勝手に私の活動を見て自分を鼓舞してただけじゃん。



「……ちなみに、琉偉は今どうしてるんですか?」


「“ゆきちゃん”しか語彙のない廃人になっています」


「ええ……?」


「今日は夜から“やってみYO!!”の収録なので、それまでにメンタルを回復させないと間に合いません。今すぐ来てください、ゆきさん!さぁ早く!」



マネージャーが手を差し出してくる。


困惑して玲美を振り返ると、玲美は「行って来なさい、救世主!」と冷やかすような言葉を投げかけてきた。



面白がってるなコイツ……?

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