第19話
「……あんた、俳優だったんだ」
「ゆきちゃん、まさか俺のこと知らなかったの?」
琉偉が私の発言にびっくりしたような顔をする。
自惚れじゃなく、実際の知名度に基づいた自信。
この日本で自分を知らない人物はいないと思っている人間の自信だ。
実際私も全く知らなかったというほどではなく、注目したことがなかったというだけ。
「俺ゆきちゃんとビデオ通話で顔出しする時結構葛藤があったんだよ。俺の顔見たらゆきちゃん、びっくりしちゃうんじゃないかなって……。でもゆきちゃん態度変わらないし、やっぱりゆきちゃんほどの人ってなると俺に興味ないんだって」
「普通に分からなかったわ」
早口でそう答え、記憶を辿る。
思えばずっとサングラスをかけているのも、マスクをしているのも不自然だ。
妙なことをされたら週刊誌に売れるし、これで私の身の安全は確保できたわけだけど……ヤバい、結構動揺してる私。
俳優?え?あの城山琉偉?大丈夫?こんなところにいて。
「あ。でもね、ゆきちゃん。俺俳優業以外でもやっていこうと思って最近新しいスキルを身に付けたんだよ」
落ち着くことができない私の横で、琉偉が黒いリュックの中からごそごそと謎のトロフィーを取り出した。
私は忘れていた。
「カメラグランプリで大賞取ったんだ」
城山琉偉という俳優が、やらせれば何でもできると世間を騒がせた天才だということを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます