第17話
「ゆきちゃん、かっこいい…………」
黒の大きな傘で私に当たる雪を防ぎながら、ルイが目をキラキラさせていた。
「凄い、ほんとに凄いよゆきちゃん。ゆきちゃんに嫌われるのは嫌だけど、俺もゆきちゃんに鞄投げつけられたかった……」
別に、いつもあんな風に言えるわけじゃない。
他に私の味方となってくれるであろう人物がこの場にいたからキッパリ言えただけで、事実ルイとぶつかるまで私はあいつが怖くて逃げていた。
「……ゆきちゃん?」
ぼうっとしてしまっていたのか、ルイがサングラスを外して私の顔を覗き込んできた。
――顔があまりにもよくて見惚れてしまう。
近くで見ても、毛穴ないんですか?ってくらい、綺麗な肌だ。
「震えてる」
「寒いからね」
「怖かったの?」
「別に。意味分かんないオタクには慣れてるし」
「俺の前では強がんなくていいよ」
「強がってないから。ああいう変な好意には慣れてるんだって」
「あんなの好意って言わないよ」
「じゃあ何?あんたの好意は本物の好意だって言うの」
あんなアカウントをフォローしておいて、あんなアカウントから私のことを好きになっといて、
愛とか恋とか笑っちゃう。
「その性欲が恋だって?」
バカにしたような聞き方をしたが、ルイは表情を一切変えない。
「うん。これが俺の恋だよ」
「私のセクシー写真見て好きになったくせに、何が恋だよ」
「……」
「言えよ。結局下心しかないですって。私のおっぱいが好きですって言えよ!」
「ゆ……ゆきちゃんの大きいおっぱいが好きです」
「言うのかよ!」
あっさり言いやがったルイにツっこんでしまって力が抜けて、何故か涙が出てきた。
……あれ?私意外と怖かったのか?
なんか、緊張が解けたみたいに泣けてくる。
「体だけじゃなくて顔も好きだし、一目惚れだし、ファッションセンスもよくて自分に似合う服研究してるしメイクも角度も考えてるし、今付けてるそのピアスだって」
「ッあーハイハイハイハイハイ!このピアスが私に似合ってるって話でしょ!?それもう聞いたし!」
「そういうところだよ」
「は!?」
ルイがサングラスを通さない瞳で真っ直ぐに私を見つめて言った。
「取るに足りない一人のファンからのメッセージにちゃんと目を通してくれてるところ。俺なんか特に長文だと思うのに、ちゃんと読んでくれてる」
「……」
「凄く勉強熱心で自分に合った見せ方を追求してて、毎日投稿も頑張ってるし、毒舌なのにお金出してるファンへの感謝はちゃんと伝えてくれるし、でも媚びすぎず自分を持ってて、俺はそういうゆきちゃんにずっと憧れてたし、救われてた」
「……」
「ごめんね。俺にとってはこれは、崇拝に近い恋なんだ」
正直動揺したし、すぐに返事を返せなかった。
こいつもこいつで私の大学やら住んでる場所やら特定しやがってるストーカーなのに。
なのに心が揺れるのは、
……結局世の中顔ってことなんだろうか……?
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