第14話

その返答を聞いた瞬間に走り出していた。



ヤバい。ヤバいのがいる。


確かに秘密を守れる子が好きだとは言ったけど、お前が好きだとは言ってない。



――ツイてない。最近、オタクから逃げてばっかりだ。


傘持ってないし。雪降ってるし。地面は滑りやすいし。ヒールだし。



何で私、クリスマスイヴにこんな思いしてるわけ!?


周りはカップルだらけで人通りも多く走りにくい。


でも後ろからは執拗に私を追ってくる足音がする。



「ゆきさん、待ってください!照れなくても!」



照れてねーーーーーよ! 脅えてんだよ!!



肌に当たる雪が冷たい。もう化粧落ちてんじゃねってくらい顔面にも雪が当たってくる。


今日はイベントだからいつもより綺麗に丁寧に化粧したしヘアセットもしたのに、きっともうぐちゃぐちゃだ。



ある程度のところで追ってこなくなると思ったが、後輩はいつまでも追いかけてくる。


日頃から体型維持のために筋トレとランニングをしていて体力には自信がある私でもそろそろ限界が来ている。


ヒールだし足が痛いのだ。むしろ若い男相手にヒールで逃げられていることを褒めてほしい。



「……っ玲美……っ」



鞄からスマホを取り出して、走りながら玲美に電話をかけようとしたその時、正面から歩いてきていた人にぶつかってスマホが飛んでいった。



そんな場合ではないかもしれないがその人は春のように温かく良い匂いだった。





「――――……ゆきちゃん?」





そして、とても柔らかく優しい声をしていた。

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