第10話

そんなこんなで【養いプラン】に入ってくれているオタクたちとの今月のビデオ通話が無事終了し、玲美の部屋に移動して今日のエロ写真投稿をしていると、ベランダで煙草を吸っていた玲美が部屋の中に入ってきて私に問うた。



「ねぇ、雪。こいつに見覚えある?」



玲美が見せてきたのは自分のスマホの画面で、そこにはベランダから撮影したらしい写真が映っていた。



「え?どの人?」



こいつと言われても通行人が何人か映っているのでそう聞くと、玲美が写真を指でアップしてくれた。


――電柱の影に、人。



「ごめん、ほんとはもっとしっかり撮りたかったんだけど。バレないように撮影するの難しかったのよね」


「ブレててこれだけじゃ何とも言えないけど……。どうしたの。この人が」


「雪がうちに来てから毎日同じ時間帯にここにいるのよ。動きもしないし」



私の顔が分かりやすく青ざめたのか、玲美が心配そうに私を椅子に座らせる。



「例のアンチコメント送ってきてた人はその後どうなの?」


「ブロックしたから分かんない」


「そう……。……考えすぎだと思いたいけど……」



玲美が深く考えるように私の隣でパソコンを開き、私のアカウントに並ぶ写真をチェックする。


居場所が分かるような投稿はしていない。映り込みにも十分注意している。



「ストーカーがいるとして。何か思い当たる人とかいないの?粘着質な元カレとか」


「そんなのいな……あ。」



つい2ヶ月前、リアルで対面したガチ恋オタクのことを思い出す。というかついさっきもビデオ通話した相手だけど。


あのエンカウントだけは今思えば凄く不自然だった。


カフェに入ってきて偶然私を見かけたというよりも、私があのカフェにいることを分かっていて入ってきたような雰囲気だった。



「思い当たる節があるのね?」



玲美の瞳の奥にメラメラとした炎が見えた気がした。



「ストーカーだけは絶対許さないわ、私。そのうえ相手は雪だし」



さすが玲美。


元カレがストーカー化して半年間苦しめられ、最終的に元カレを警察に突き出して逮捕させただけのことはある。


随分と頼もしい味方だ。


まぁ、まだストーカーと決まったわけじゃないけど。



「今後出掛ける時は私と一緒に行きましょう。これは戦争よ」



早急に自分の中で戦争を始めている玲美を眺めていると、何だか大丈夫な気がしてきた。

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