第6話

『何そいつ、良ファンじゃん』



レポートを何とか提出した夜、私は画像や動画の編集を行いながら大学の友達の玲美れいみと作業通話をしていた。



露出系ネットアイドルをしているとはいえ、普段は真面目に大学に通っている私。


思いっきり顔出ししているので、私がそういう活動をしているというのは同学科内でも有名だ。


それを知って私を避ける人もいれば、偏見の目で見てくる人もいれば、変な下心を持って話しかけてくる男もいる。



そんな中唯一私に友達として接してくれるのは玲美だけ。


そんな大切な友達に、私は今日ファンとたまたま会ったことを喋っていた。



「そー。必要以上に絡んでもこなかったし、長時間話そうともせずすぐ帰ったし。久々にあんな良ファン見たわ」


『ビデオ通話したことあったんでしょ?』


「って言っても一回だけだよ。あんま内容も覚えてないし……」



あのプランは最近開設したばかりで、ビデオ通話もまだ会員それぞれ一度しかしていない。


一人一人の顔もまだ覚えてないレベルだ。



『でもほんとに偶然なの?』


「え?」


『気を付けなよ。ネットに上げたちょっとした写真から住所特定だってできる時代だし』



玲美が心配そうに言ってきた。


確かに、電柱や光の角度から場所を特定できる粘着質な人がいることも知っている。


でも私は部屋の中でしか写真を撮っていないし、ご飯に出かけてもそこの写真をアップすることは滅多に無い。旅行先とかなら別だけど。



「まー、大丈夫っしょ」


『あんた結構大雑把だから心配だわ……』



電話の向こうで化粧水のボトルを開ける音がする。


玲美の方はお風呂上がりで、スキンケアタイムなのだろう。



動画編集に飽きた私はベッドに寝転がり、スマホの画面をスクロールしてファンからのリプライを流し見した。



途中、あるところで指が止まる。





【ネット上で下着姿晒して恥ずかしくないんですか? 親が泣いてますよ】





面白くもないその文面に、ふ、と乾いた笑いが漏れた。



アンチは一定数いる。


活動初期は気になったが、今では“あ、コバエ飛んでるな”くらいにしか思わなくなった。





恵まれた容姿とスタイルを利用して何が悪い。


この商売が成り立たせているのは、若い女のセクシー写真に釣られて金を払う猿共だ。

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