第8話

「お嬢様、足元にお気をつけください」


「ええ、ありがとう」

伊達さんに促されて後部座席に乗り込む母を見て溜め息を漏らす。

あんな服、二度と着るもんですか。

私のためだとか言ってお嬢様ドレスやワンピースが、イギリスの屋敷のウォークインクローゼットに所狭しとしまわれてる事を思い出して身震いする。


「アリスもママンみたいな洋服似合うのにね。文化祭思い出すわ」

この子、怖いことをさらっと言ったよ?

嫌悪の滲んだ瞳で見てしまった。


「・・・絶対に嫌だし」

くわばらくわばら

あんなの着せられた日にゃ・・・ゾゾゾッと鳥肌がたつ。

高校生の頃に泣きつかれて着た事を思い出す。

不思議の国のアリス・・・まさにそんな感じだった自分に泣きそうになったんだ。

男勝りな性格の私がお嬢様なんて気取れない。

見た目はふんわりした感じに見られたりするけど、実際の私は勝ち気なんだからね。

絶対に可愛いと思うのに、なんてブツブツ言う冴子は、完全無視した。


私より、あの子の方が似合うんだよ、ああゆうのは。

大人しくて華奢で可愛い性格をしてた私の大切な片割れ。



あの子が居たなら・・・・・。

きっと、今は変わっていたはずなんだ。

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