第8話

あの子の儚い笑顔を思い出す。

あ~ぁ、胸が苦しいなぁ。

必死に駆け抜けたあの一年は、私の人世の中で一番濃いものだったと言える。


もう会えないあの子。

もう会えないあの人。

大切な・・・切ない存在。


私にとってあの子は、初めて会った時から唯一無二だった。

そして・・・彼は特別な思い人だったんだ。

胸を締め付ける切なさにキュッと目を閉じた。


「お待たせしました」

その声にはっとする。

目を開けて振り返ったそこには、私達の荷物を手にした折村さんがいた。

過去を思い出してぼんやりとしてしまった自分に、まだ過去に囚われてるのだと思い知る。

私の中でまだ何一つ消化されていないんだと。


こんなにも、彼女はまだ私の中に居る。

そして・・・彼も・・。

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