第29話
「そんな顔するな。今は全然痛くはないから。…勲章みたく思っているんだ」
髪をかきあげ、傷を晒して、豪快な笑みを向けた。
自信に満ちたその態度に、昔と変わらない泰三を感じた。
若かったあの頃も、いつだって力強い彼を感じていた。
自分の全てを預けられるような。
その腕の中にいるうちは、怖いものなんてなかったことを思い出す。
切なさが広がり、唇を噛んだ。
それは感情が高ぶった時の癖で、私の唇を見つめた泰三が口を開いた。
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