ハイスペックIT男子のOFFタイム

アイリス

第1話

普段は仕事も完璧。男女ともに人気があり、パソコンの前に座れば、ものの数秒で新しいシステムを組み上げる。愛想も良ければ、笑うと出来るエクボが魅力的。癖毛の天パもぐっとくる。彼の口癖。


「ありがとう。貴方のおかげです」


柔らかな笑顔に骨抜き。付いたあだ名は完璧王子。


僕は見てしまった。たまたま立ち寄ったゲームセンターで見てしまった。


「っしゃ。大量だぜ。新作入ったと聞いてやりにきてみたら、楽勝じゃねか」


パーカー姿で普段かけない眼鏡をかけた王子。大量にクレーンゲームの景品を持ち、お兄ちゃんちょうだいとやって来た子どもに向かって。


「はぁ。なに言ってやがる。ガキ。

 これは俺の戦利品。自分の力で取ってこそだろ。諦めんなよ。じゃあな」


言いつつチョコのお菓子を子どもの頭にのせて、ゲームセンターを出る彼。


僕には気付かなかったが、大量のお菓子とぬいぐるみを手にした彼が気になり追いかけた。また、ゲームセンターを梯子して大量に景品をゲット。最終的に向かったのは養護施設。


「おばちゃん。おじちゃん。

 ほらよ。施設の奴らに土産だ。じゃあ俺行くわ。明日も仕事だからな。また顔出すぜ」


立ち去ろうとした彼に、施設の子どもが出て来て、口々にありがとうを口にする。


光景を見て、僕はその場を離れた。見てしまった完璧王子のプライベート。完璧王子が普通の人間に見えた。

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