第6話
俺は苛立ちを抑えようと、タバコに火を着けた。
紫音・・・・・無事でいてくれ。
ただ、その思いを念じ続けた。
啓太はパソコンデスクでひたすら、カタカタと情報を検索する。
やっぱり紫音を攫ったのは、星林の奴らか?
「チッ!」
吸っていたタバコを灰皿に、揉み消す。
左の手の平で、右の拳をきつく握った。
俺は何をしていたんだ。
同じ場所にいた紫音を攫われちまうなんて、失態もいいところだ。
チームCROWのトップが聞いて呆れるな。
自嘲的な笑みが、口元に浮かぶ。
【チャラララ・チャラララ・チャラララ】
静かな幹部室に、着信音が響いた。
パソコンデスクに置いてあった携帯を手に取る啓太。
俺は息を潜めて、それを見守る。
「はい、咲斗か?ああ・・・・じゃあ、広間の方へ連れて行ってくれる。すぐに行くよ。」
短い会話で、電話が切れる。
そして啓太が再び口を開く。
「虎、咲斗が到着した。広間の方に案内させてる。行くか?」
「ああ。」
俺はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。
啓太も立ち上がると、幹部室のドアを開けた。
俺を先に通すと、後ろからついて来る。
頼む、何か情報を持っててくれ。
心の中で祈りながら、広間に向かう。
その思いは、啓太も同じだろう。
沈黙したまま俺達は廊下を歩いた。
ゆっくり呼吸を整えながら、冷静を装う。
最悪の事態を考えていない訳じゃない。
でも、今は一縷の望みに賭けるしかねぇ。
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