第87話

窓を叩く、雨の音。


雨、さっきよりも強くなってる…


『…』


「服、脱げよ。」


『っ…』


「風邪ひく。」


『…平気。』


「そういう訳にいかねぇだろ。」


『平気だって。』


「いいから脱げよ」


グッ


『嫌っ!』


パンッ!


無理矢理服を脱がそうとする弘人の頬を


『あっ…』


思わず叩いてしまった


「あのなぁ。こんな状況で襲うわけねぇだろ。」


『ごめんっ…』


「バカじゃねぇの」


呆れたようにタオルで自分の髪をくしゃくしゃと拭きながら、弘人はカーテンを開けて窓の外を見た


『だって、弘人がいきなり脱がそうとするからじゃんっ』


「変な言い方すんじゃねぇよ、勘違いすんなバーカ」


『バカバカ言わないでよっバカ!』


「はぁ?」


振り返る弘人が


『っ…』


あきれたように笑うその笑顔が


『…』


今までと、少しだけ違って見えた。


「なんだよ」


『っ…別に。』


弘人との距離が


『…』


なぜだか少しだけ、近付いたような気がした。

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