第84話
「ちょっと、どうしたの?」
堪えきれずにこぼれ落ちた涙を見て
七美は驚いたようにそう言った
ガラッ
『っ…』
「来いよ。」
『っ』
教室から出てきた弘人
「ちょっと佐野!?」
掴まれた腕が痛い
『離してよっ』
何も言わず、強く掴んだ私の腕を引いて階段を上がり
『弘人っ…』
その先にある扉を開いて
『っ…』
屋上に出た
『…もうやめてよ…』
「…」
『また七美に誤解されるじゃんっ…もうこれ以上、達也を悲しませたくないのっ!』
「無かったことにすんのかよ。」
『っ…』
「あの頃のこと。」
どうして
『…』
そんなこと言うの…
どうしてそんなに
泣きそうな顔をするの…
「俺は」
『…』
「忘れたことなんて無かったよ…優。」
空から
ぽつりと降り出した雨が
私たちの頬を
そっと濡らした
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