第83話

鞄を置きに机に向かうと


後ろの席で、クラスの女子と楽しそうに話をする弘人が私を見た


「おはよー優ちゃん。」


『…おはよ。』


昨日のことなんて無かったみたいに


いつも通りの弘人


「ねぇ弘人っていつの間に佐々木さんと仲良くなったのー?」


「さぁね。」


そうやって、小さく笑って私を見る


「えーなにそれ、なんか怪しい」


『…』


私ばかりが過去にとらわれている


達也の言う通りだ…


《夢に見るほど会いたかったんだもんな。》


弘人に会いたくて


あれから数えきれないほど弘人の夢を見た


弘人の夢を見るたび


やっぱり弘人に会いたいと思った


いつまでも過去に囚われて


私一人だけが、前に進めずに


それが悔しくて…


『私たち、幼なじみなの。』


「え?」


周りの視線が私と弘人に集まる


美羽が驚いたように私を見た


『家が近所で、佐野が転校してった小5までは仲良かったんだよ。それだけ。私達は何の関係もないよ…あの頃も、これからも。』


私を真っ直ぐに見た弘人


弘人が怒ってる


『…っ』


そんな目で見ないで…


あふれそうになった涙をこらえて


「ちょっと、優!」


呼び止める美羽の言葉を無視して教室を出た


教室を出たところで


「優っ?」


七美に呼び止められた


『…』

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