第82話

「それ飲んだら着替えろよ、遅刻するぞ」


『うん』


ココアを飲む私の髪を、達也が整えてくれる


『…』


私が困った時


辛い時、悲しい時


あの頃、いつも隣にいてくれたのは弘人だった


弘人がいなくなって


いつの間にか


その代わりをしてくれたのは達也だった


あれからずっと


達也は私の隣にいてくれた


「雨降りそうだな」


バスを待つ間、達也が空を見上げてぽつりと呟いた


繋がった手があたたかい


『達也』


「ん?」


そんなに優しい目をして私を見下ろして


『体育祭、楽しみだね』


「おう」


『達也の分のお弁当も作っていくね』


「やった。」


達也はふわっと笑った


「じゃあな」


『うん』


廊下で達也と別れて教室に入る


「おはよー優っ」


『おはよ』


「ねぇ優っ担任に体育祭前日の準備頼まれたんだけどさ、一緒にやってくれない?」


『えー、美羽引き受けちゃったの?』


「めっちゃ懇願こんがんされて断りきれなかったんだもんー、七美はやってくれるって」


『仕方ないなぁ』


「ありがとー優っ!」


『あれ、七美は?』


「さっきトイレ行ったよ」


『そっか』

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