第80話
鍵を開けて、扉を開いた達也の後をついて部屋に入る
扉を背中にして立ち止まる私を
そんなに切ない顔で見つめた後
私の後ろに手を伸ばして
ドアの鍵を閉めた達也
そのまま私を見下ろして
『…』
キスをした…
「…」
そっと引き寄せられて
達也に抱きしめられて
やっぱりこの温もりを
失いたくないと思った
「うち泊まること、連絡入れとけよ?」
『うん』
達也の部屋のベッドに、もたれるように床に座った私に
「これしかなかった」
ペットボトルの水を手渡してくれる
『ありがと』
「コンビニで何か買って帰ればよかったな」
そう言って、ベッドに座った達也
『簡単なのなら作るよ、この前買った野菜とかまだ残ってるよね』
「何作ってくれんの?」
『んー、オムライスとか』
「やった。」
見上げると、ニカっと笑った達也と目が合って
『…』
思わず私は目を逸らしてしまう。
『達也…』
「ん?」
『朱里さんとは…何もなかったんだよね。』
「何もなかったよ。」
『…』
「本当に、相談乗ってただけ。」
『そっか…』
なにもなかったなら、どうしてなにも話してくれなかったんだろう。
『…』
なにもなかったから、なにも話さなかったのかな。
達也が他の子と連絡を取っていたこと
達也が横浜で弘人たちと会っていたこと
何も知らなかった
気付けなかった
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