第77話

「なぁ、弘人…。」


「…」


「これだけは、誤解しないでやってほしい…」


「…」


「同情なんかじゃない。あいつは本気でお前のことを心配してた。俺もお前のことが…」


「だったらなんで言わなかった?」


「っ…」


「中3の春」


「…」


「朱里が玲奈にされたこと。」


「…」


「なんで黙ってたんだよ。」


「…弘人…俺、」


「あぁ、謝らなくていいよ。」


さえぎるようにそう言った


「お前のこと、許すつもりねぇから。」


弘人の静かで落ち着いた声


「…」


こういう時


『…』


弘人は本気で怒ってる…


「もう、誰のことも」


「…」


「信じねぇって決めたから。」


『…』


無表情に


色のない瞳…


私の方に


見向きもせずに


弘人は背中を向けて


離れていく


指先が


『…どうして…』


小さく震える


「…」


『…私だけが本当に…知らないことばっかり…』


「…ごめん。」


『…泣』

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