第74話

帰り道


バスを降りて家に向かう途中


公園で


ベンチに座っている達也を見つけた


『…達也。』


私に気付いて


ばつが悪そうに


目を逸らす


《…お前を弘人のところに行かせたくなかった。》


昨日


《ごめん。》


あれから一度も


連絡も無いまま…


『今日、ちゃんと学校行ってたんだね。』


制服の袖を肘の下までまくっている達也


今日は、この時期にしては気温が高い。


達也の隣


私もベンチに座る


公園の水道から落ちた水滴が


ポチャッと音を立てた


「…朝、迎えに行かなくて悪かった。」


『…』


「昨日のこと」


いつも


「…許してくれ、とは言えねぇよな。」


そうやって


「…」


悲しく笑う…


『…私、達也の彼女だよ。』


「…」


少し驚いたように私を見た達也


『達也と付き合うって、私が決めたんだよ。』


あの頃


『弘人のことは関係なく…達也を好きだと思ったから付き合ったの。』


達也は私の救いだった


『達也は知らないだろうけど』


達也がいてくれたから


『私はとっくに』


悲しいことも、苦しいことも


『達也のこと、こんなに大好きになってるんだよ…。』


乗り越えられた


気付けばこんなにも


私の中で


達也の存在が大きくなった


だから…

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