第71話

中学に入って


周りの達也を見る目が


少しだけ変わったように感じるのは


きっと


「多田に告っちゃおうかなー」


「やめときなよ、なんか好きな子いるっぽいし」


「けど彼女いないって言ってたよ?」


気のせいじゃなかった




『おはよー達也っ』


「はよ」


だるそうに大きなあくびをして


私より少しだけ前を歩く達也


少しずつ広がる


私たちの距離は


『達也っ』


私の達也への気持ちを


少しずつ


大きくしていった


立ち止まって振り向いた達也


「ん?」


『歩くの早いー。』


「お前がおせぇの。」


『…』


「なに」


俯く私を


不満そうに見つめる達也


『別にっ』


「はー?遅刻するぞ、早く行こうぜ」


中学に入って


少しだけ達也が冷たくなったように感じるのは


自然なことなのかな


いつまでも、子供の頃みたいにずっと仲良くはいられない


きっと


どちらかに恋人ができれば、尚更。


ポケットに突っ込んだ達也の手


小さい頃は


当たり前に繋いでた手


達也の手に


触れたい…なんて。


『今日さ、一緒に帰らない?』


「部活あるから、お前終わるまで待ってられないだろ?」


『待つよ』


「いいよ、遅くなるかもだし」


『なんで?私が待つって言ってんだからいいじゃんっ』


「んー…」

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