中学1年、春。

第69話

中学の入学式の朝


マンションを出ると


少し大きめの真新しい制服を着た達也の姿


「はよ」


『おはよっ』


まだほんの少し冷たい春風が私たちの髪を揺らす


『どう?制服似合ってる?』


そう言って一回転した私を見て


「まぁまぁかな」


照れ臭そうにそう言った


少し長めの袖を気にする達也を


私はかわいいと思った


中学校までは歩いて20分くらいの距離


通学路に咲く桜の花びらが


ふわふわと風に舞う


『友達できるかなー』


「部活入ればいいじゃん」


『達也は何か入るの?サッカーとか?』


「いや、俺バスケ部入ろうと思ってるんだ」


『バスケ部?達也バスケ好きだっけ?』


「あんまやったことないから挑戦してみようと思って」


『へー、達也は絶対サッカー部に入ると思ってたよ』


弘人は何部に入るんだろう


弘人もサッカーうまかったなぁ


背が伸びてたら弘人もバスケ部かな


それとも足が早いから陸上とか


野球部には入らないだろうな


野球には全然興味なかったし


なんて…


少しずつ


弘人の話題はあまり出さない方がいいんだと


なんとなく、感じてた


「今日は帰り別々な」


『なんで?』


「初日から男と帰ってたら、お前友達から浮くんじゃないの?女同士ってそういうのあんだろ?」


『へー、心配してくれてるんだ笑』


小さな気遣いが


達也の優しさが


私は嬉しかった

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