第68話

ガラッ


「おはよー優っ」


『おはよ。』


次の日の朝


マンションの前に達也はいなかった


「やばっもうすぐホームルーム始まる、ちょっとトイレ行ってくる」


「急ぎなよー」


教室から出て行った美羽を見送った七美が


「ねぇ、優」


私を見る


「昨日、佐野と何してたの?」


『え?』


「ごめん、偶然見ちゃって。佐野に手引かれて別の部屋に入ってくとこ。」


『…』


「優、佐野のこと好きなの?」


『ちがっ…』


〝子供の頃、仲良かったんだ〟


『…』


そう言いかけた言葉を


飲み込んだ


「…多田、本当に優のこと大事にしてんじゃん。」


『…』


「多田を大事にしてやんなよ?まぁ、私が言うことじゃないけどさ。」


『…うん…ごめん…』


「いや、私こそ偉そうにごめん。」


『…』


何も言えなかったのは


何を言ったって


言い訳にしか聞こえないと思ったから


彼氏以外の人と部屋に入っていく姿を見て


何もないなんて


思えるはずないんだ


私は


〝幼馴染み〟を理由にして


そういうことをしてんだ…



「来週は体育祭だからな、怪我のないように練習頑張るように」



ホームルームが終わって


一限目が始まる


窓から見える向かい側の校舎の屋上で


あなたの姿を見た


あなたはそうやって


時々、空を見る。



《嫌いなんだよ。》



空が嫌いと言ったあなたは


そんなにも愛しそうに


そんなにも悲しそうに…



ねぇ



あなたは




『…』






何を見つめるんだろう…

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