第57話

『…どういうこと?』


「…」


『なんで…達也が弘人の彼女と連絡取るの…。』


「…俺、あいつの彼女と会ったことあんだ。」


『…』


「中学の時、俺バスケ部入ってただろ?」


ねぇ


「何度か横浜の中学まで試合行ったことあって。」


悔しかったのは


「そこで仲良かった、功ってヤツがいたんだけどさ。そいつの妹が、弘人と付き合ってた。」


達也に、何も教えてもらえなかったからじゃない。


「横浜で何度か弘人と会った時に、そいつもいて…そこで連絡先聞かれて。」


私が達也に


「ちょうど弘人のおばさんが亡くなった頃で…いろいろ相談に乗ってた。」


そうさせたってこと…。


『…そっか…』


涙が溢れ落ちたのは


「…優…」


悲しかったからじゃない


「…ずっと…黙っててごめん…」


達也の声が


『…泣』


苦しそうだったから…





次の日の朝


いつもより少し早く家を出て


いつもより一本、早いバスに乗った。


『…』


バスに揺られながら、流れていく景色を眺めた


いつも隣で笑ってくれた達也の


小さな変化に気付けなかったのは私


私は達也のこと


ちゃんと見れてなかった…

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