第52話

バス停に着くと


タイミングよく来たバスに乗る


もしも


あの時、弘人が引っ越さなければ


私たちは今


恋人同士だったかな


『…』


だけど


私には達也がいる


今更〝もしも〟なんて


考えたって意味ない。


バスの一番後ろの席


弘人から顔を背けるように


窓の外を眺める


『私に似てる子と付き合うって、そんなに私のこと好きだったの?笑』


沈默が怖くてからかうように言ったその言葉に


「好きだったよ。」


そんなに真っ直ぐ


『…』


返事をするから…


「あの頃、お前が好きだった。知ってんだろ。」


振り向いて


やっぱり弘人の目を見れなくて


俯いた。


『冗談に、そんな真面目に答えないでよ』


「悪かったな、冗談通じなくて。俺そういうの苦手だから」


そうやってふざけたように笑った弘人


嘘つき


弘人はそういう空気を


上手くかわせるようになった…

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