第40話

「佐野、今日もサボりかな」


『さぁ。』


「ほんと、優って佐野に興味ないんだねー」


『あるわけないでしょー笑』


ガラッ


「ホームルーム始めるぞー、さっさと座れ」


担任が教室に入ってきて


朝のホームルームが始まってすぐに


ガラッ


教室の扉が開いた


「佐野ーまた遅刻か」


気怠けだるそうにあくびをしながら


担任の前を横切る弘人


「挨拶くらいしたらどうだっ」


そんな言葉なんて興味なさそうに


私の後ろの席に座る


「はよ。」


低くて落ち着いた


弘人の声


「今日、一緒に帰ろうぜ。」


そうやって


見透かしたような冷たい声で…


『…』


弘人の指先が


私の髪に触れる


振り向けずにいる私を


「優ちゃん」


まるで嘲笑うように…


ねぇ


《俺に押し付けないでよ。》


突き放したり


《一人にして、悪かった。》


抱き寄せたり


《…お前は俺のもんだよ。》


キスしたり…


どれが


本当の弘人なんだろう。


窓から吹き込むそよ風が


教室のカーテンを揺らす


「なぁ、優。」


微かに耳に届いた


「あの頃」


あなたの切ない声



『…』



私はあなたから




「本当は俺のこと、好きじゃなかった?」






逃れられない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る