第39話

あれから


ほとんど会話もせず


電車に揺られて家に帰った


次の日の朝


当たり前のように


マンションの前で待っていてくれた達也


一つしか空いていないバスの座席に


私を座らせてくれる


つり革に掴まる達也を見上げて


そんな私に気付いて


「なに見惚みとれてんだよ」


いたずらに笑う


『見惚れてませんーっ』


「寝癖ついてる」


『え、どこ?』


「ほんと朝弱いな、優は。」


そうやって


私の髪を撫でて


困ったように笑う


バスを降りて


並木道を、手を繋いで歩く


『もうすぐ秋祭りだね』


「そうだな」


『今年は一緒に行こうね?』


「去年は優、友達優先して一緒に行けなかったもんなー」


『まだ怒ってんの?もう何度も謝ったのにーっ』


ははっ、と笑った達也



秋祭り


小学6年の、あの日


公園のベンチで


私は達也に告白された…



『じゃあまたね』


「おう」


廊下で達也と別れて教室に入った


「おはよーっ優」


『おはよ、七美』


「美羽遅刻だってー」


『寝坊?珍しいね』


机に鞄をかける


後ろの席に


弘人はいない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る