第35話

「優ーっ」



部屋のドアが開き


達也があくびをしながら入ってくる


『ちょっとー!勝手に入ってこないでよっ』


「勝手に入ってねぇし、おばさんが入れてくれたんだよ」


小さい頃から幼馴染みの私たちは


自由にお互いの家を行き来していた


「相変わらずおせぇ」


『まだ約束の時間じゃないんですけど』


鏡の前でメイクをする私の後ろで


ベッドに横になってスマホをいじる達也


『今日どこ行くの?』


鏡越しに達也に話しかける


「秘密。」


『なにそれ』


「先にどっかで飯食ってく?」


『この前駅前にできたカフェ行きたい』


「じゃあそこで」


『着替えるから出てって』


「は?今更恥ずかしがることなくね?」


『いいからーっ』


「わかったよ、じゃあリビングにいる」


呆れたように起き上がり


部屋を出ていく達也


カーテンの隙間から差し込む朝日


今日は天気がいい


『お待たせ、達也』


「じゃあ行こっか」


『うん。行ってきまーす』


「達ちゃん、優のことよろしくね」


キッチンで食器を洗う母親が達也に声をかける


「はい、行ってきます」


こんな当たり前の光景が


安心する

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る