第34話

《綺麗に見えるものだけが正しいなんて考え》


弘人は


《俺に押し付けないでよ。》


この5年間を


その人たちと


どんなふうに過ごしたの


ねぇ


《一周忌だったから。》


怖かった


あなたがこんなにも


手の届かない場所に行ってしまったから


《人を殺したこと、ある?》


ねぇ、弘人…


それは


おばさんの死と


関係があるの…?


「優っ。」


『…』


バスを降りると


バス停のベンチで座っていた達也が


私のもとに歩いて来る


『…』



「…」


達也の前で


『…ごめん…』


泣いてばかりだ


「…弘人と一緒だった?」


『っ…』


「あいつの香水の匂い…」


静かに呟いた達也は


私を優しく抱きしめる


『…カラオケで偶然会っただけ。』


「…そ。」


『…信じて…。』


「…わかってる。笑」


そっと離された体


「帰ろう。」


達也はそう言って


手を繋ぐ


そうやって


悲しい瞳で


私を見る


「明日休みじゃん?」


『うん。』


「二人でどっか行く?」


『うん、そうだね。』


いつだって


達也は優しくて


私のことを


1番に考えてくれて


なのに私は


弘人を


思い出さない日はなかった


達也は


私なんかには


勿体なさすぎて


だけど


手放すこともできなかった

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