お墓。

第32話

「お前、人を殺したことある?」


『…』


「俺はあるよ。」


その鋭い瞳で


私を見つめて離さない


『…なに言ってんの。』


鼓動が速くなる


指先が冷たい


「ほんと、変わんねぇな。」


『っ…』


「…何も変わんねぇな、お前は。」


「弘人ーっおせぇよ」


突然、弘人の名前を呼ぶ声が


少し離れた場所から聞こえて来る


「わりー。」


振り向くと


見慣れない制服を着た男の人


着崩した制服や明るく染めた髪


雰囲気が


弘人と似ていた


「お前また女ナンパしてんの?」


そう言ってケラケラ笑いながら歩いて来る


「へー、めっちゃ可愛いじゃんっ」


お酒とタバコの臭いが鼻を突く


「てかお前と同じ高校?」


『っ』


そう言って私の肩に回した腕を


『…』


弘人は強く掴んだ


「イテッ冗談だって!離せよ弘人っ」


「飲み過ぎだっつの。部屋戻ってろ」


「へいへい、玲奈がお前のこと探してたぞー」


「すぐ戻る。」


弘人がそう言うと


その人は掴まれた腕を摩りながら離れていく

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