第23話

「優っ」


『あ、達也。』


「悪い、今日一緒に帰るって言ったけど担任に放課後用事頼まれて」


『そっか』


ガタッ


『っ…』


振り向くと、後ろの席の弘人は教室を出て行った


「優、先帰る?」


『あ、待ってるよ。予定ないし』


「そんな時間かからねぇと思うけど、ごめんな」


『いいよ、頑張ってね』


「弘人、ちゃんと来てんだな」


『うん、ほとんど寝てるけど。なんで?』


「あ、いや。前の学校ではほとんど教室行ってなかったみてぇだから。」


『…そうなんだ。』


「あんま素行良くなくて親戚も手焼いてたみてぇ。親父さんの転勤決まって家留守になるからって、こっちに戻ってきたらしいけど。」


『それ、弘人から聞いたの?』


「え、」


『…』


「いや。」


『…なにそれ、答えになってない。笑』


キーンコーンカーンコーンッーー-


『チャイム鳴ったよ、また放課後ね』


「おう。じゃあな」


教室を出て行く達也


『…』


後ろの席を振り向くと


何も乗っていない机


ペタンコの鞄


弘人のいない椅子


数学の教師が教室に入ってきて、黒板に並べられる数字やアルファベット


頬杖をついてあくびを一つ


窓の外に広がる青い空を


飛行機雲が二つに分けた

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